価値は、増したわけではなく

以前、「文章は、財産」というエントリを書いた。
文章は、財産
それ以来、今まで以上に「文章を書く」ということを大切にしている。それは、ふとしたことをメモする時であっても、ブログを書く時であっても、授業の記録を残す時であっても。
書いた文章が、すべて自分の財産になる、とは限らない。書く内容にもよるし、書き方にもよる。だから、書くことや、書き方には気を払っていきたい。

文章は価値を増す

最近、「マシュマロを、もう一つ」を読み終えた。ブログ、「R-style」を毎日更新している、倉下さんの電子書籍。

マシュマロを、もう一つ: セルフ・マネジメントのヒント集 R-style Selection

とてもおもしろい。「セルフマネジメント」について、具体的な方法は書かれておらず、どういう背景があって、やりたくなくなるのか、コントロールできなくなるのかが存分に書かれてる。で、その文章のほとんどが、ブログ「R-style」から選ばれ、過去のブログのエントリを、順序を新たに編集されたもの。
ぼくは毎日「R-style」を読んでいるので、おそらく本書に登場する話の大半は、過去にブログにて読んでいると思う。読んだことがあるはずなのに、それが、すごく面白い。「マシュマロを、
もう一つ」以外の、「CategoryAllegory」、「真ん中の歩き方」もおすすめ。どちらも、「R-style」からセレクトされた文章から出来上がった電子書籍。
これらを見て、「文章というのは、価値を増してくれるものなのだな」という感想を抱いた。ブログの1エントリとして読むよりも、膨大なブログの中から、あるテーマでひとくくりにし、提供されたものの方が、おもしろく感じる。文章を蓄積していくことで、どんどん価値をましていくのではないか、と。

Category Allegory

真ん中の歩き方: R-style selection

価値は、見出された

R-style » ブログにピリオドをうつ」にて、ブログを集め、本を作ることについて、倉下さん自身が言及している。「ブログにピリオドを打つ」という表現で。
毎日のブログの更新について、「ダンス」になぞらえて、こんな風に表現している。

これまでたくさん踊ってきました。その日の気分に合わせて、そのときの状況に合わせて。その中には、気に入ったステップ、乗ってくる手の振り方、 カッコイ イ決めポーズなんかがきっとあります。それらを振り返り、一つの曲としてまとめること。言い換えれば「踊る」を「踊り」に変えること。そうした再構成に よって、あたらしい価値が生み出せるのではないか、そんな予感があります。

ブログを毎日更新し、日々踊っている、様々なステップの数々の一部分を切り出し、集めることで、全く違ったダンスを見せることができる。

ブログにのせた文章を本にまとめなおすと、香りが変わるのです。 自由に踊り続けていれば、ときどきジャンプが出てくるかもしれません。そのジャンプだけを集めれば、ひたすらジャンプの連続になります。そうする と、踊っていた中ではわからなかった、それぞれのジャンプの差異が目立つようになります。あるいは、並べ方によっては、ジャンプに違った意味を持たせられ るかもしれません。

日々踊ってきたものから選んでいるところにこそ、「マシュマロを、もう一つ」や「CategoryAllegory」、「真ん中の歩き方」のおもしろさがあるように思う。
「セルフマネジメントについて、本を書いてください」とお願いされて、一から書き始めても、決して「マシュマロを、もう一つ」は生まれない。「こんな内容にするぞ」と定めて、書けるものではない。
ジャンプして、その瞬間のコマだけを連続させると、ずっと浮いているような動画を作ることができる。それは、動画では決してとることはできない。ひとつながりの動画では表現できないものを、一つ一つのコマを切り出し、つなげることで、はじめて表現することができるように、「真ん中の歩き方」や「CategoryAllegory」のもつおもしろさは生み出されたのだろう。
「文章というのは、価値を増してくれるものなのだな」という感想は、少し違った。価値は、別に勝手に増したわけではない。倉下さんが、「ブログに、新たな価値を見出した」。

おわりに

ブログを含む、あらゆる文章は、その見せ方を変えることで、新たな価値を創造する可能性がある。そういう思いを抱くようになった。
ぼくも、ポツポツとブログは書いているし、ブログ以外にも、仕事やメモなど、様々な文章を書いている。一つでも多く、価値ある文章を書いていきたいもんだ。

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