“とりあえず”・”なんとなく”からの脱却 ー数学からぼくが学んだこと1ー

地図をもっている。行きたい場所がある。のに、”とりあえず”東に向かったり、”なんとなく”道をわたってみることなんて、普通はしないと思います。
でもぼくは、何年もの間、”とりあえず”や”なんとなく”に身を任せていました。
”とりあえず”式変形したり、”なんとなく”値をあてはめたり。
そう、数学の話です。


少し、2次関数の話をします。
中学のころから「関数」を学び始めます。そして、高校に進み、関数をさらにふかく考えていくことになります。その一番はじめにじっくり学んでいくのが「2次関数」です。
2次関数は、「放物線」と呼ばれます。

2次関数において、とても特徴的な点が、「頂点」です。頂点を境に、それまで増加していれば減少に転じ、減少していれば増加に転じるからです。

それゆえ、2次関数に関する問いでは、頂点がカギを握ることがよくあります。5問出題されれば、そのうち3〜4問は頂点を求めて考えていかねばならない、と言っても過言ではないくらいの頻度です。


ひとつ、次の問題を考えてみます。

関数\(y=ax^2-2x+a+2\)の値が常に正であるような\(a\)の値の範囲を求めよ。

2次関数の問題だ、と判断し、「”とりあえず”頂点を求めてみよう」と考える。
とりあえず頂点を求めたくなる気持ちはわかります。実際それでうまくいくことも多い。なにせ、5問中3,4問ほどは頂点がカギになってくるくらいですから。
”とりあえず”頂点を求めたからといって、方向を間違え、答えまでたどり着くことができないわけではありません。実際、頂点を求め、考えを進めていくこともできます。
とはいえ、2次関数が与えられているからといって「”とりあえず”頂点を求めてみよう」というのは、地図があるのに、現在地や目的地を確認せずに歩き出すようなもの。5問中3,4問それでうまくいくとはいえ、今どこにいて、到達したいのはどこなのか、の把握が不十分であれば、いつか大きく道を間違ってしまうことになる。
現在地や目的地を確認せずに目的地にたどり着いたとしたら、それはすごくラッキーです。もしかしたら、とんでもない方向に進んでしまっている可能性もあるのですから。
目的地にたどり着きたいのであれば、まずは、自分がどこにいるのか、行きたい場所はどこかを確認するのが普通です。それらが地図上のどこにあるか確認できてこそ、目的地に向かうための最初の一歩が、歩き出す方向が定まります。
ぼくは、高校3年生まで、そんな当たり前のことすらまったく意識せず、数学の問題を考えていました。
この問題を読み、「2次関数やし、頂点頂点」と、”とりあえず”頂点を求めていました。


地図において「現在地と目的地を確認する」ことは、数学において「条件と求めるものを確認する」ことと同じ、と言えます。
まずはそこから。そこから、次にどう進むかを考えていく。
「”とりあえず”頂点を求める」のではなく、上記の問題に対し「条件と求めるものを確認する」ことからはじめてみます。まずは、現在地と目的地を確認するのです。
与えられているのは、2次関数\(y=ax^2-2x+a+2\)。求めるものは、この関数の値が常に正であるような\(a\)の値。
”とりあえず”頂点を求めたくなる気をおさえ、注意深く与えられている関数を眺めると、与えられている2次関数は、\(a\)の値によってその姿をいろいろと変化させることがわかります。
\(a>0\)であれば、2次関数のグラフは下に凸になります。
\(a<0\)ならば上に凸になります。
さらには、\(a=0\)であれば、与えられた関数は2次関数ではなくなってしまいます。

パッと見は2次関数の形をしているものの、実際は\(a\)の値により2次関数ではない場合も考えられる、というわけです。
このように「条件を確認」してみると、「”とりあえず”頂点を求めてみよう」というのは、さほどいい手ではないことがわかります。だって、\(a=0\)のときには、左辺は2次関数ではなく、頂点が存在しないのですから。
\(a\)の値によって、左辺はいろいろなケースに分けられる。まずは、はじめの一歩として\(a\)の値によって場合わけをするほうが良さそうです。


地図をもとに目的地に行きたい時には、地図上での現在地と目的地、つまり、今いるところと、たどり着きたいゴールを確認する。
同じように、数学の問題を解く時には、まずは条件と求めるもの、つまり、与えられていることと、それらを利用して明らかにしたいことを確認してから、どういう一歩を踏み出せばいいか考え、判断する。
数学の問題に取り組むと、繰り返し繰り返し、「条件と求めるものを確認してから、どう進むか考え、判断する」ことになります。
今わかることをもとに、次の一手を選択することになります。
この繰り返しが、ぼくの人生に与えた影響というのは、きっと小さくはないはず。
「条件と求めるものを確認してから、どう進むか考え、判断する」ことを教えてくれ、「”とりあえず”式変形したり”なんとなく”値をあてはめたりする」というそれまでの思考に終止符を打ってくれた高校時代の恩師には、感謝してもしきれません。
恩師がぼくに大きな影響を与えてくれたように、ぼくも数学を通して、何か良い影響を与えることができればな、と願うばかりです。

では、お読みいただきありがとうございました。

問題の解説

関数\(y=ax^2-2x+a+2\)の値が常に正であるような\(a\)の値の範囲を求めよ。

「\(y=ax^2-2x+a+2\)の値が常に正」
とは、
「\(y\)が、\(ax^2-2x+a+2\)という\(x\)の式で与えられており、その値が常に正」
という意味です。

関数は、グラフでとらえることで可視化することができ、それが理解の手助けになることがよくあります。
今回も、グラフの力をかりることにしましょう。
2次関数の値が「常に正」になるとはどういうことか。「常に正」になっているときの、グラフの状況を考えていきます。

例えば、\(y=x^2-4\)という2次関数を考えてみることにします。実際にいくつか\(x\)に値をあてはめて計算してみると、\(y\)の値が負になる時と正になる時があることに気づきます。
\(x=1\)のとき、\(y=1^2-4=-3\)や、
\(x=0\)のとき、\(y=0-4=-4\)などは、\(y\)の値が負になる。
\(x=3\)のとき、\(y=3^2-4=5\)などは、\(y\)の値が正になる。
つまり、\(y=x^2-4\)は、常に正ではない、ということです。このことをグラフでとらえてみましょう。
\(y=x^2-4\)のグラフを描くと、以下のようになります。

グラフにおいて、\(y\)の値が負になっているのはどの部分かを考えると、\(y=x^2-4\)のグラフの、\(x\)軸よりも下にきている部分であることがわかります。

つまり、\(y=x^2-4\)という2次関数のグラフを描いてみると、\(x\)軸よりも下にくる部分がグラフ上に存在する。グラフ上の\(x\)軸よりも下にきている部分は、\(y\)の値が負の値をとっているところである。
グラフ上で、\(x\)軸よりも下にくる部分があれば、その2次関数の\(y\)の値は負になるときがある、ということ。「常に正」ではないということです。

グラフを描いて、\(x\)軸よりも下にくる部分があれば、その関数は「常に正」ではない

わけですね。
では、「常に正」となるようなグラフは、どういったものになるのか。

以下のような状況であれば、負になる部分がなく、「常に正」である、と言えることになりますよね。

\(x\)軸よりも下にくる部分がないので、\(y\)の値は負にはならない。\(y\)の値が負になることはないので、すなわち「常に正」である、ということになる。
こんなグラフの状況になる条件を考えれば、問われている「関数\(y=ax^2-2x+a+2\)の値が常に正であるような\(a\)の値の範囲」を求めることができそうです。
ただ、忘れてはいけないのは、与えられている関数は、\(a\)の値によっていくつかの場合が考えられる、ということ。
\(a=0\)であれば、与えられた関数は2次関数ではなく、\(a>0\)であれば、2次関数のグラフは下に凸になり、\(a<0\)ならば上に凸になる。
ということで、それぞれについて考えてみましょう。

(i) まずは、\(a=0\)のとき。
このとき、与えられている関数は、\(y=ax^2-2x+a+2=0x^2-2x+0+2=-2x+2\)となります。2次関数ではなくなり、1次関数に姿を変えました。1次関数は、グラフでとらえると直線です。実際にグラフを書いてみると、、、

\(x\)軸よりも下にくる部分が存在し、負の値をとることがあるので、「常に正」ではないことがわかります。\(a=0\)のときは、題意を満たしません。つまり、\(a=0\)は、関数\(y=ax^2-2x+a+2\)の値が常に正であるような\(a\)の値ではない、つまり、求める解ではないということです。

(ii) 次に、\(a<0\)のときを考えてみます。
このとき、関数\(y=ax^2-2x+a+2\)は、\(x^2\)の係数が\(0\)より小さいことから、上に凸のグラフを描く2次関数となります。上に凸の2次関数は、どんな場合であれグラフ上で\(x\)軸よりも下にくる部分が存在するので、やはり題意を満たしません。

これまた\(a<0\)は、関数\(y=ax^2-2x+a+2\)の値が常に正であるような\(a\)の値の範囲ではない、ということになります。

(iii) 最後は、\(a>0\)のとき。
このとき、関数\(y=ax^2-2x+a+2\)は、\(x^2\)の係数が\(0\)より大きいことから、下に凸のグラフを描く2次関数となります。下に凸であるので、条件が整えば、グラフ上で\(x\)軸よりも下にくる部分が存在しないとき、つまり、「常に正」となるときがあることが、図の①をみるとわかります。

もちろんいつでも「常に正」であるわけではなく、②のようなときは、\(x\)軸よりも下にくる部分が存在し、負の値をとることになります。

以上のことから、グラフが①のようになるような条件を考えればいい、ということになります。このようになるのは、「頂点の\(y\)座標が0より大きいとき」と考え、頂点を求めて計算してもいいのですが、ちょっと計算がややこしくなりそうなので、別の手で攻めようと思います。
それは、「判別式」です。判別式は、2次関数が\(x\)軸と共有点を持つときと持たないときを判別することができる公式です。

  • \(D=b^2-4ac<0\)のとき、共有点を持たない
  • \(D=b^2-4ac=0\)のとき、1点で接する
  • \(D=b^2-4ac>0\)のとき、2点で交わる

ということが言えます。

グラフが①のようになるのは、2次関数が\(x\)軸と共有点をもたないとき。なので、
\(D=b^2-4ac<0\)
となるときを考えます。まず\(D\)の値を計算してみましょう。
\begin{eqnarray}
D &=& b^2-4ac \\
&=& (-2)^2-4a(a+2) \\
&=& -4(a^2+2a-1)
\end{eqnarray}
この値が、\(0\)より小さくなるのは、

\begin{eqnarray}
&~&-4(a^2+2a-1)<0 \\\ & \Leftrightarrow & a^2+2a-1>0 \\
& \Leftrightarrow & a<-1-\sqrt{2}~,~~-1+\sqrt{2}<a
\end{eqnarray}

今、\(a>0\)のときを考えているので、常に正となるような\(a\)の値の範囲は、
\[-1+\sqrt{2}<a\]
となります。
以上、(i)、(ii)、(iii)より、関数\(y=ax^2-2x+a+2\)の値が常に正であるような\(a\)の値の範囲は\(-1+\sqrt{2}<a\)です。

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